抗がん剤治療の副作用とは?

抗がん剤治療には、個人差はありますが副作用が出ることが多くあります。

副作用にはそれぞれ対策があり、適切に対処することで症状の緩和が見込めるでしょう。

今回は抗がん剤による副作用の種類や対策について解説していきます。

目次

1. 抗がん剤治療の副作用はなぜ起こる?

抗がん剤治療を進めるにあたって副作用が起こることがあります。

がんの治療に必要な抗がん剤ですが、副作用はなぜ起こるのでしょうか。

それは、抗がん剤ががん細胞だけではなく、正常な細胞にもダメージを与えてしまうためです。

副作用で起こる症状は、体内のどの部分に抗がん剤が作用するかによって異なります。

例えば、腸に作用すれば下痢や便秘に、骨髄中の造血幹細胞に作用すれば白血球や赤血球が作れなくなり、感染症や貧血を起こす原因になります。

2. 抗がん剤の副作用の種類

抗がん剤の副作用は、特に細胞の分裂や増殖が活発に行われる臓器である皮膚や毛根、腸管、骨髄で起こりやすいです。

抗がん剤で起こる副作用は、具体的に以下のようなものがあります。

①吐き気

吐き気は、抗がん剤が消化管の粘膜や脳の神経を刺激することで起こると考えられていますが、治療に対する不安などの心理的な要因も無視できません。

吐き気の症状が出る時期や原因は、以下の3種類に分けられます。

・急性嘔吐

治療開始直後から24時間後までに起こる症状のことをいいます。

・遅発性嘔吐

治療開始後24~48時間で起こり、2~5日程度続く症状のことをいいます。

・予測性嘔吐

抗がん剤治療で吐いた記憶から、抗がん剤に対する嫌悪感により起こる症状です。

②脱毛

脱毛は、毛の根元にある毛母細胞が抗がん剤によってダメージを受けるために起こります。

治療開始後2〜3週間で症状が出始めることが多く、抗がん剤の種類や量、個人差はあるものの、1〜2ヶ月で全て脱毛する場合が多いです。

髪の毛だけでなく、まゆ毛や体毛も抜け、皮膚に痛み・かゆみを感じる方もいます。

ただし、脱毛は一時的な症状であり、個人差はありますが治療終了後半年から1年ほどで戻ることが多いです。

③貧血

貧血は、骨髄の中にある造血幹細胞が障害され、赤血球が減少することが主な原因です。

また、吐き気などで食事量が少なくなってしまうことによる栄養素不足(赤血球の材料となるたんぱく質、鉄分、ビタミン類等の不足)でも起こります。

この影響により、だるさや疲れやすさ、めまい、息切れなどの症状が出る場合もあります。

からだ全体に十分な量の酸素が供給されなくなるためです。

④下痢

抗がん剤によって起こる下痢には2種類あり、原因や発現する時期が異なります。

1つ目は腸のぜん動運動が活性化されるために起こる下痢です。

抗がん剤で消化管の運動を調節する副交感神経が影響を受け、腸の運動が活発になりすぎることにより起こると考えられています。

治療当日から数日後に症状が現れることが多いです。

2つ目は粘膜障害による下痢です。

抗がん剤で消化管の粘膜が障害を受けたり、白血球が減少して腸管感染が起きたりすることで起こります。

治療開始後10~14日に現れます。

⑤便秘

抗がん剤が腸の働きを調節している自律神経へ作用するため、便がいつもより出にくくなることがあるでしょう。

また、吐き気止めの種類によって腸の運動が弱くなったり、食欲不振により食事量が変化したりすることによっても起こります。

⑥口内炎

抗がん剤治療を受けると、舌・歯茎・唇や頬の内側に炎症が起こり、痛みや出血、ただれ、味覚障害などが起こることがあります。

口内炎は2種類あり、1つ目は抗がん剤が粘膜に対して影響する直接的な障害、2つ目は白血球減少による骨髄抑制に伴う局所感染によって生じる二次性障害です。

一般的に、抗がん剤投与の5~10日目頃に発生しやすいです。

⑦感染症

抗がん剤の影響で白血球が減少すると、細菌やウイルスに対してからだの免疫力が弱くなり、感染症にかかりやすくなります。

38℃以上の発熱やのどの痛み、膀胱炎、下痢、口内炎などの症状があれば、感染症を疑いましょう。

3. 抗がん剤治療の副作用への対策

抗がん剤の副作用はいくつもあります。

それぞれの副作用について、具体的な対策を解説します。

①吐き気

吐き気に対しては、症状のタイプに応じた吐き気止めを服用することで、症状を抑えることができます。

治療開始直後の急性の吐き気には、グラニセトロンなどの5-HT3遮断薬、アプレピタントなどのNK1受容体拮抗薬などがあります。

また、数日後に起こる遅延性の吐き気には、デキサメタゾン等のステロイド剤が一般的です。

一方で、予期性の吐き気は心理的な不安が原因のため、抗不安薬などを用います。

食事は塩味や酸味、香辛料など刺激の強いものは避け、食後は歯磨きをこまめに行って口腔内を清潔に保つことが大切です。

②脱毛

脱毛が起こる時期をあらかじめ予想しておき、治療前に医療用ウィッグや帽子、がん医療アートメイクなどを備えて、脱毛に備えて前向きに過ごしましょう。

そのほかに紫外線や乾燥、摩擦による刺激にも気を付けることも大切です。

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③貧血

鉄は赤血球を作るのに欠かせない栄養素です。

バランスの良い食事をとり、特に鉄分の豊富な食材である、レバーや、牛肉、あさり、さば、まぐろなどを摂取しましょう。

病院で鉄剤が処方されることもあります。

また、タンニンは鉄の吸収を阻害するため、食事の前後にタンニンを多く含む濃い緑茶や紅茶、コーヒーなどの摂取は控えましょう。

④下痢

下痢の時には水分やミネラルが失われるため、スポーツドリンクなどで水分やミネラルを補給するようにします。

ひどい場合は医師に相談し、下痢止めを処方してもらうと良いでしょう。

⑤便秘

水分を多めに摂取し、イモ類や野菜などの食物繊維の多い食品をとりましょう。

医師から腸の運動を強める下剤が処方される場合が多いです。

⑥口内炎

食事や歯磨きに気を付けて口腔内を刺激しないようにします。

医師から消毒作用や痛み止め作用のあるうがい薬を処方されることが多いです。

⑦感染症

入浴や濡れタオルで体を清潔に保ち、外出時はマスクを着用します。

帰宅後は手洗い・うがいを徹底することである程度は予防できます。 

副作用が起こったときは医師・薬剤師に相談を

抗がん剤治療と聞くと副作用のイメージが強く、不安に感じる方が多いと思います。

起こりうる副作用やその対策をあらかじめ把握しておくことはとても大切です。

例えば脱毛に備えて、抗がん剤治療前にがん医療アートメイクをしておくことはおすすめです。

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副作用がひどい場合は、セルフケアをした上でその症状に応じた処方薬を服用したり、抗がん剤の量を調整したりすることで、負担を軽減することができます。

気になる症状があれば、担当の医師や薬剤師に相談し、治療を続けていきましょう。

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