がん患者さんの脱毛を抑えることを目的とした「頭皮冷却装置」は、一部の日本の病院でも取り扱っています。
今回は「頭皮冷却装置」とはどのようなものなのか、解説していきます。
気になった方はぜひご覧ください。
頭皮冷却装置とは?
頭皮冷却装置とはどのようなものなのか紹介していきます。
頭皮冷却装置は、患者さんの頭皮を冷却する装置であり、主に固形癌に対する薬物療法を受ける患者さんの脱毛抑制を目的に使用するものです。
頭皮冷却器で脱毛の抑制が期待される理由|そもそも脱毛する理由って?
頭皮冷却器の効果を解説する前に、薬物治療中のがん患者さんに脱毛が起きる理由についてみていきましょう。
がん治療で行う化学療法(=薬物治療)は、体内の活発な細胞に特に影響を与えます。
その活発な細胞の中には、毛母細胞と呼ばれる髪の毛や眉毛などの毛の細胞も含まれており、多くの毛母細胞を含む毛包(毛の根元)が、化学療法によってダメージを受けてしまいます。
そのため化学療法の影響を受けた毛母細胞を含む髪の毛などの毛は、約2週間後から脱毛していくといった仕組みです。
脱毛が始まる時期や速さ、量には個人差があります。
では、なぜ頭皮冷却器を使用すると脱毛の抑制が期待できるのでしょうか。
そもそも化学療法によって毛包はダメージを受けますが、そのダメージは頭皮冷却によって抑えられると言われています。
冷却器の中で冷やした冷却液を、専用のキャップ内に送り循環させて患者さまの頭皮を冷却します。
頭皮を継続的に冷却すると、毛包へ化学療法の薬液を含んだ血液が届きにくくなるため、脱毛の抑制が期待できるという作用機序です。
頭皮冷却装置を使用する際のポイントと避けるべきこと
頭皮冷却装置の使用に当たって、通常のヘアケアとは異なったケアのポイントや避けるべきことがあります。
それぞれに共通するのは、下記の2つです。
- 頭皮や毛髪への刺激を抑えるようにすること
- 頭皮や毛髪に熱を与えないこと
それぞれ詳しくポイントと注意点を解説します。
頭皮冷却後のケアのポイント
頭皮冷却後は必ず洗髪をしましょう。
ゴシゴシと擦らずに優しくぬるま湯で洗髪をします。
洗った後は髪を上にまとめずにおろしておき、目の粗い櫛で優しくといてください。
また、洗う際のシャンプーやコンディショナーはなるべく低刺激なものを使用します。
ただ、低刺激といってもベビー用のシャンプーは推奨されていないため、使用は避けましょう。
頭皮冷却後のケアで避けるべきこと
洗髪後は、温風や強風のドライヤーで乾かすのは避け、タオルで優しく乾かすようにしましょう。
もしドライヤーを使うのであれば、冷風で優しく髪の根本を引っ張らないようにしながら乾かすことがポイントです。
頭皮や毛髪に熱を与える行為はよくないため、ドライヤーの使用には注意が必要です。
頭皮冷却後のケアにおいて、パーマやカラーはNGになります。
頭皮冷却装置について気になるQ&A
最後に頭皮冷却装置に関して気になっている方から寄せられている、質問と回答のQ&Aをまとめました。
頭皮冷却装置に関して興味を持っている方はぜひ確認してみてください。
Q.頭皮冷却装置の使用に痛みや苦痛はありますか?
A.痛みや苦痛については個人差があり、人によっては不快感を感じる方もいるかもしれません。
頭皮の温度が約37℃から20℃に急速に下がるため、最初の10分から15分程度の時間で不快感を感じやすいとされています。
徐々に冷却装置の温度に対して頭皮が順応していくとされていますが、あまりに不快感が強い場合は様子を見ましょう。
Q.頭皮冷却を行っている期間中は頭皮をブラッシングしても良いですか?
A.髪がもつれてしまったり毛玉のようになってしまったりするのを防ぐためにも、毎日ブラッシングすることが大切です。
ただし髪の根本を引っ張るのはよくないため、低刺激のヘアオイルなどで滑りをよくしてからブラッシングするのがおすすめです。
Q.頭皮冷却を行っている期間中は、ポニーテールなど髪をまとめても良いですか?
A.ポニーテールのように髪をまとめたり結んだりする行為は、髪に負荷を与えてしまうため、髪を保つためにもあまりおすすめできません。
もしやむを得ず行う場合は、髪の根元へ張力や摩擦がなるべくかからないようにすると良いでしょう。
まとめ|頭皮冷却装置は治療中のQOLを支えるもの
ここまで頭皮冷却装置について解説しました。
頭皮冷却装置を取り扱っている医療機関は限られており、まだ多くの方が頭皮冷却を知らないかもしれません。
そのため、がん治療中の方のQOL(生活の質)の維持やアピアランスケアの観点から、頭皮冷却の情報が多くのがん患者さんに伝わることを願っています。
取り扱っている医療機関の詳細は下記からご確認ください。