おまもりアートメイク症例検討会とは
アピアランスケアとして、医療分野でアートメイクを広げたい。
抗がん剤治療で脱毛の副作用に悩む方、脱毛症に悩む方が、医療アートメイクを知って、全国どこでも安心して施術を受けられるようになってほしい。
そんな想いから、一般社団法人全日本がん脱毛医療アートメイクを立ち上げ、おまもりアートメイクを広げる活動をしています。
がん患者さんをはじめとする「病気で眉毛を失った患者様の表情を医療アートメイクで守りたい」という想いから、『おまもり』と名づけました。
おまもりアートメイク症例検討会とは、弊社団に所属してくださっているアートメイクアーティストが集まり、脱毛症状におけるアートメイク症例を共有し、意見交換をする会です。
おまもりアートメイク症例検討会の目的
美容分野のアートメイクは、就職先で指導を受けたり、スクールや講座に通うことで様々な症例を学ぶことができます。
アートメイクの組織もいくつかあり、キャリアの長い先輩もいるため、アートメイクアーティストはどこかに所属していれば、誰かに相談し教わることで、美容分野におけるアートメイクは悩みを解消しながら、技術力を高めることが可能です。
一方、医療分野のアートメイクおいては、2024年9月時点においてもまだまだ情報が少なく、どこで誰に相談すれば良いのかわからないのが実情と言えるでしょう。
医療施設や医師間においても、アートメイクの認知は低く、脱毛症に悩む患者さまの多くは、まだアートメイクの存在を知りません。
そして技術力の高いアートメイクアーティストであっても、脱毛症の肌に、常に綺麗なアートメイクを施すことはなかなか難しいです。
難易度の高い、脱毛症の方へのアートメイクの施術。
しかし、美容におけるアートメイクの症例に比べて、個人が経験している脱毛症の方へのアートメイク症例は多くても数十例ではないでしょうか?
実体験から得られる情報は、誰にも真似することができない強力な武器です。
一人では得られる症例数は少なくとも・・・
私たちおまもり認定アートメイク看護師による、脱毛症の方へのアートメイク症例が集まったら、それはとても大きな症例情報となります。
アートメイクアーティストは個人の活動が多いため、なかなか他者の技術や、症例を見る機会がありません。
ですが、医療現場ではカンファレンスが常にあり、担当していない患者さまの症例から学びを得ることは当たり前のことです。
情報共有あってこそ、組織の知識と経験値が強くなります。
そのため、おまもりアートメイク症例検討会では、おまもり認定アートメイク看護師の皆さまそれぞれに、抗がん剤治療中の方や脱毛症の方へのアートメイク症例をシェアしていただき、よりクオリティの高い医療アートメイクをできるようになることを目指しています。
症例を共有し合いながら、相互質問での情報交換
・脱毛相談をされるのは治療のどの時期か、どんな声をもらうのか
・患者さんにこう相談されたらどう答えるか
・使わない色素はあるか
・眉頭の定着をどうするか
・脱毛前の左右非対称の眉について
・治療後の患者様の定着や赤みの違いはどこからくるか
・抗がん剤治療後の肌の違い
・韓国の針や色素、技法について
・アフターケアの話
・無毛症の方の肌質について
・それぞれのアーティストの技術や色素や針の選択の仕方
・ナノストロークについて
・地毛発育予測と選択する色素について
・点線定着をどう対策していくか
etc
当症例検討会では、1つの発表につき、聞き手側からの質問はもちろんのことですが、発表者自身からも質問が多くありました。
弊社団が選抜している『おまもり認定アートメイク看護師』(以下、おまもり看護師の表記)は、非常に技術力の高い方ばかりです。
今回共有していただいた写真も、施術はとても綺麗で、参加者からも「綺麗に入っていますね」という声もよく上がりました。
施術には問題がない。けれど、患者さまのことを考えるからこその悩みを、おまもり看護師の方の多くが抱えていることがわかりました。
「この点から判断してこうした施術を行いましたが、他の方ならどんな選択をしますか?」
「私はこの肌に対してこの色を選択しますが、皆さんは何色を選ぶでしょうか」
「このケースの場合、パウダーと毛並みをどのような基準で選択しますか?」
「無毛症の方で、全て色が取れてしまったケースがあり、同じ症状の方で他の症例があれば聞きたいです。」
「この方に施術する場合、私はこの方法でやりましたが、皆さんはどの技法を使用しますか?」
などなど・・・選択は間違っていなかったとしても、医療アートメイクの世界に正解はありません。
ましてや症例数の少ない、脱毛症の方への施術事例。
おまもり看護師の方からは、「もっとよくできたのではないか」「アートメイクをやってよかったと思ってもらいたい」という発言が多くあり、非常に多くの意見が飛び交っていました。
今回の症例検討会では、1人3症例のシェアで持ち時間は40分でしたが、あっという間に時間が過ぎてしまうくらい、1つ1つの課題に対して議論が続いていました。
※上記は弊社団で共有した症例検討会用の資料。抗がん剤の治療状況から色素の情報まで。細かな点まで共有することで、質問がより具体的になっていました。
現場の乳がん看護認定看護師の方とも意見交換を
今回、聖マリアンナ医科大学病院の乳がん看護認定看護師の神蔵奈々さんにもご参加いただき、認定看護師との情報交換も多く行われました。
・抗がん剤治療中、後の患者さまの肌の状態のリアル
・抗がん剤治療後、経過時間別で、毛が生えるか生えないか
・抗がん剤終了後の発毛状況は、薬ではなく個人差なのではという見解
・乳がんの治療内容による副作用の違いと、選択される治療の割合
・がん患者さまの肌質について
・施術時のウィッグの扱いの話
etc
これまでも聖マリアンナ医科大学の先生や看護師の方にはお世話になっており、乳がんについての勉強会も開催していただきました。
現場にいる認定看護師の方のお話を聞いて痛感するのは、机上の知識だけではわからないことが多いということ。
例えば、抗がん剤治療において、副作用に脱毛があるのは有名ですが、実際にどれくらいの割合で、どの期間に脱毛が発生するのかは、話を聞くまでわかりませんでした。
最初に脱毛が起こるのはどの部位?眉毛の脱毛はいつ生じるのか?
治療が終了した後に、発毛が起こらない方は実際はどれくらいいらっしゃるのか?
患者さんの抱えている心情、負担に感じる部分、目立ちにくい悩みなど。
乳がん看護認定看護師と、アピアランスケアに特化したおまもり看護師。双方の情報を共有しあうことで、
・病院側は、より安全に医療アートメイクをアピアランスケアとして患者さまに紹介できるように
・おまもり側は、より患者さまに寄り添うアートメイクを提供できるように
どちらも、想いのベクトルの先は患者さま。
看護レベルの高い、情報シェアと議論が展開されました。
乳腺外科の先生と意見交換
聖マリアンナ医科大学病院から、副部長の志茂彩華先生が症例検討会に参加してくださいました!
専門領域:乳癌、乳腺疾患、甲状腺・副甲状腺疾患
取得資格:
日本外科学会 専門医, 日本乳癌学会 専門医, 日本がん治療認定医機構認定医, 検診マンモグラフィ読影認定医師, 乳房再建用エキスパンダー/インプラント責任医師, 乳房再建用エキスパンダー/インプラント実施医師
とい経歴を持つ、まさに乳がん領域のエキスパートです。
医師視点から、医療アートメイクについての疑問点を質問していただき、アートメイクの安全性をお伝えすることができました。
例えばいただいた質問の1つに、「合併症が起こったケースはあるか。発生する割合はどれくらいか」という内容が。
合併症についてはこれまでも心配の声をお聞きしていますが、実際は起こる確率がとても低いのが現状であることをお伝えさせていただきました。
また、おまもり看護師側からも、「どういう情報が医師に伝われば、医療現場でもアピアランスケアとして安心して医療アートメイクを紹介することができるのか」という質問などをさせていただきました。
安全性に関する議論は尽きないものの、アートメイクを理解してもらおうと0から話すとなると、膨大な量の話を医師に聞いてもらう必要が出てきます。
もっと理解してもらいやすく、医師にとって知りたいポイントを重点的に伝えられるように、現場の医師の声はとても参考になりました。
カウンセリングもアピアランスケアとして大きな課題
症例検討会では、技術以外にも多方面に議論が飛び交い、カウンセリングも大きなテーマの1つとなりました。
がん患者さまや脱毛症に悩む方に、「やってよかった」と思っていただけるような医療アートメイクの提供をするためには、カウンセリングも重要です。
アートメイクの世界では、技術の向上は重要視されますが、カウンセリングについての情報やケーススタディは、web上にはほとんど見かけません。
病気について深入りするのは躊躇するものの、よりその人に合わせた施術を行うためには、治療状況、皮膚の状況、特に改善したいところなど、少しでも多くの情報が必要です。
どうしたら、患者さまに精神的な負担をかけることなく、安心して医療アートメイクを受けていただき、笑顔で帰っていただけるか。
患者さまからの話はさらっと話は終わりますという方から、患者さまから多くの話を聞いて涙を流したというケースまで。
「〇〇さんのお人柄が好きです。どんなふうにカウンセリングをしていますか?」という意見も。
尊敬する在り方、ありますよね。
カウンセリングの話から、施術時のウィッグの扱い方の話まで、患者さまを想う議論は広がっていきました。
アートメイクだけれど、看護
話し合う様子を見てくださった乳がん看護認定看護師の神蔵さんからは、「アートメイクと言いながら、看護なんですね」との言葉をいただきました。
その言葉を聞いたおまもり看護師の蟹江さんが、こんなことをおっしゃっていました。
「アートメイクを通じて、私たちがただ眉毛を作るだけでなく、
患者さまの病に向かう気持ちに寄り添ったり、
時にはターミナルケアもしていることが
伝わったんだなぁと感じました。
アートメイクは医療である必要があるのか?
アートメイクは本当に安全なのか?
そんな話ばかり最近耳にしていたけれど、
アートメイクを、
私たち看護師がやっている意味を
再認識した瞬間でもありました。」
アートメイクは医療行為。
施術ができるのは、医師と看護師のみ。
そう国に認められてはいるけど、まだまだ医療分野においては認知の低いアートメイク。
弊社団代表の石原は、
「アートメイクは好き。美容も楽しい。だけど、私はもっと看護がしたい。
私は眉毛のない自分が好きではなかったから、アートメイクに凄く救われた。アートメイクを知ったときにすぐにやりたいと思った。
アートメイクが医療行為であるならば、脱毛に悩む患者さんにこそ、私はこの技術を届けたい」
そんな想いを抱き、おまもりアートメイクの活動を開始しました。
初めは一人きりだったこの活動も、アートメイクで医療貢献をしたいという、同じ想いを持った仲間が集まり、少しずつ患者さまに届けることができています。
これからも私たちは看護に向き合う姿勢そのままに、アピアランスケアとして、脱毛に悩む方に届くように、アートメイクに向き合い続けていきます。
あと何回桜をみることができるのか
初めまして、おまもりアートメイクの運営サポートをしており、この記事を書いている馬場といいます。
自己紹介をする場合、一般的には記事の冒頭で挨拶するものですが、私の名前は重要ではないのでこの後忘れていただいて構いません。
運営として、第1回となるおまもりアートメイク症例検討会に参加させていただきました。
その中で、
「症例検討会はなぜリアル開催なのか?オンラインではやらないのか?」
というご質問をいただきました。
おまもりアートメイクは、脱毛に悩む患者さまのための活動でありますが、運営の立場として、一緒に活動してくださるおまもり看護師さんの力になれることを常に念頭において1つ1つの活動を考えています。
どうして症例検討会はリアル開催のみなのか。
これには2つの大きな理由があります。
1つは、おまもり看護師の活動のクオリティを維持していくこと。
おまもりアートメイクを広げていく上で、大切な理由です。
1つ目の理由をお伝えした後に書いていきますが、個人的には、症例検討会をリアル開催にする、もっともっと大切な理由があります。
おまもり認定アートメイク看護師が、安心して紹介していただけるように
おまもりアートメイクを患者さまに届けるためには、医療施設や医師、看護師の協力が必要不可欠となります。
病院では日々、365日共に働く仲間と顔を合わせて働きながら、顔を合わせてカンファレンスが行われています。
病院に新しい活動を採用してもらうハードルは高く、アートメイクを理解していただき、そして病院で実施許可をいただくために、まずは私たちの活動を信頼していただく必要があります。
現在聖マリアンナ医科大学の系列病院でおまもりアートメイクを導入していただいておりますが、導入までには代表の石原が何度も病院に通い、アートメイクや社団の活動について1つずつ伝え、話し合い…
病院で勤務されている医師看護師と、同じ温度感、同じ姿勢で、アートメイクに向き合っていくことは、私たちの活動を周囲に理解していただくためにも、顔を合わせて、交流あるリアルな場での症例検討会は最低限必要なことであると考えています。
オンラインで集まることと、リアルで同じ空間を共有し学ぶこと、この温度感は全く違うものです。
勉強会で得られる学びは、知識のみの表面的なものになることも多々あります。
真の学びは、同じ意識を持つもの同士の交流、会話から得られる話にあると考えています。
知識の共有に特化した勉強会は今後もオンライン開催を予定していますが、交流からの学びを重視し、
また、協力しただける医療関係者の方にもより安心していただけるよう、
リアルな場で顔を合わせての症例検討会を大事にしていきます。
ですが、もう1つ。
いや、私にとっては9割こちらの理由がリアル開催の原動力になっている、大切にしている思いがあります。
おまもり認定アートメイク看護師の方の笑顔を増やしていきたい
私は薬剤師であるため、がん患者さまや脱毛症の方に、アートメイクの施術を行うことができません。
私にできることは、おまもり看護師の方をサポートすることのみです。
私にできることを全力でやる。
『病から表情(あなた)を守る』
弊社団が大事にしている言葉です。
弊社団の代表石原を筆頭に、おまもり看護師の方は患者さまが笑顔になれるよう、日々頑張っている。
それならば、私はおまもり認定看護師の方の笑顔を増やしていきたい。
おまもり看護師の皆さんはとても勉強熱心で、学びを深めるためにおまもりアートメイクに所属してくださっている方も多くいらっしゃいます。
学び続けることはもちろん大事ですが、ただ知識を得るだけの活動は、長く支持されることはないと私は考えています。
おまもり認定看護師の方と、長く楽しくこの活動を続けていきたい。
10年後に振り返った時に、文化祭を懐かしむように、おまもりアートメイクに「参加してよかった」と思っていただけるような場所にしていきたい。
今一緒に活動してくださっている方と、これからもずっと一緒に活動していきたいのです。
綺麗事に聞こえる?そうであっても、私は綺麗事を実現させたい。
今回の症例検討会より以前から、おまもり認定看護師さまの真摯な想いと活動に触れ、あと何回、私は運営としてその場に同席でき、おまもり看護師の方に会えるのだろうかと考えているのです。
桜は1年に1回しか咲きません。
死ぬまで一緒にいる人は、なかなか多くはないでしょう。
私は今33歳。夫とは、50年一緒にいたら、50回は桜を見れるかな。
でも今3歳の娘とは・・・もしかしたら後10年もしたら、一緒に桜を見に行ってくれなくなるかもしれない。
娘と桜はきっとあと30回も見れないでしょう。
家族であっても、あと100回は一緒に桜を見ることができません。
じゃあ妹とは?友人とは?
色々な人との出会いがある中で、同じ時間を共有できる時間は、振り返れば一瞬であったりします。
弊社団の活動は、ありがたいことに出会った方には、「良い活動ですね」と言っていただけることがほとんどです。
でももっと。一緒の時間を共有しているおまもり看護師の方には、「楽しい」と思ってもらいたい。
一緒に活動する日は、笑ってもらえたら嬉しい。
勉強するだけでなく、この場を楽しみにしてもらえるように。
楽しんで学びを持って帰っていただけるように、今後も企画していきたいです。
大人になっても、「学生の時は楽しかったなあ」と振り返っているように、おばあちゃんになった時に、「おまもりでの活動は楽しかった」と振り返ってもらえるような場所にしていきたい。
症例検討会の場での、笑顔の多さ
症例検討会では、真面目な意見交換をしつつも、参加者の笑顔をたくさん見ることができました。
この笑顔の数を、私は運営を通して増やしていきたいです。
おまもり看護師の方の笑顔が多いほど、その先にいる患者さまを笑顔にできるようになり、おまもりアートメイクの活動は、長く続く良いものになると信じています。
在り方を尊敬する
笑顔があるだけでなく、メンバー間で、「(おまもり看護師の)鵜澤さんの生き方が好きで、カウンセリングを見習いたいです」という話が自然に出ていて、すごく幸せな気持ちになりました。
誰かの在り方を好きになれるって本当に素敵なこと。
自身の活動を続ける上で、尊敬している人の存在はとても貴重です。
代表の石原も、お二人が凄く仲良くて驚いた!と言っていたくらい、オンライン上ではこうした温かい交流は見えにくいもの。
医療としてのアートメイクの質の向上のためにも、楽しく活動を続けていただくためにも、尊敬しあえる空間というのは大事にしていきたいです。
私の想いが最後に長くなってしまいましたが、以上を持ちまして、第1回おまもりアートメイク症例検討会の活動報告とさせていただきます。
最後に、この記事を読んでくださり、弊社団の活動に興味を持ってくださいましたら、この先をもう少しだけ読んでください。
おまもり認定アートメイク看護師を募集しています
おまもりアートメイクはクオリティを確保した上で、がん患者さまに提供する医療アートメイクです。
がん患者さんをはじめとする「病気で眉毛を失った患者様の表情を医療アートメイクで守りたい」という想いから、『おまもり』と名づけました。
アピアランスケアとしてのアートメイクは、少しずつ普及してきていますが、まだまだ都内の一部でした施術が受けらない状態であり、大学病院や医師への認知度も少ないのが現状です。
弊社団の目標の1つは、『全国のがん患者さまが、ご自身のお住まいのエリアでアートメイクを受けられるようになること』です。
そのためには、もっと多くの医療従事者の方に医療アートメイクを知っていただき、施術を提供できる場所を増やすことが必要です。また、がん患者さまにアートメイクを提供できるアートメイクアーティストも全国に必要となります。
弊社団では、おまもり認定アートメイク看護師としてがん患者さまにアートメイクを提供してくださる方を、全国で募集しております。
おまもり認定アートメイク看護師の詳細を知りたい方は、下記より詳細閲覧のお申し込みをお願いいたします。