乳輪・乳頭アートメイクとは?施術についておまもりアートメイク認定看護師の鵜澤さんへ取材

おまもりアートメイク認定看護師は、アートメイクだけでなく抗がん剤などの知識もあり、抗がん剤治療前、治療中や治療後の方も安心して施術を受けられる存在でもあります。(医師の許可が必要)
がん治療を受けた方の中は、特に乳がんの治療により温泉に行きにくくなった、気持ちが塞ぎがちになったなど悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
以前本記事で取材させていただいたおまもりアートメイク認定看護師の鵜澤さんは、乳輪・乳頭アートメイクも行っています。
https://omamoriartmake.or.jp/archives/3135
乳輪・乳頭のアートメイクは乳輪・乳頭の形成手術を受けずに、アートメイクによって乳輪・乳頭を再現することが可能です。
乳がん治療後に悩みを抱えている方へ、治療後の選択肢の1つとして乳輪・乳頭のアートメイクを提供する鵜澤さんへ話を伺いました。
乳輪・乳頭のアートメイクに関心がある方はぜひご覧ください。
自己紹介
■これまでのアートメイクアーティストとしての経歴の自己紹介をお願いいたします。
鵜澤さん:大手アートメイククリニックでアートメイクを施術し経験を積んだ後、新規クリニックの立ち上げに加わり、アートメイク専任看護師として7年勤務してきました。まもなく8年目を迎えます。
2025年2月からは、エピテーゼとアートメイクの2本柱でお仕事したいと思いフリーランスとなりました。
■乳輪・乳頭アートメイクを学ぼうと思ったきっかけや当時の思いを教えてください。
鵜澤さん:私がアートメイクを知りスタートした原点は10年前に乳輪・乳頭のアートメイクをテレビで見たのがきっかけだったからです。
美容目的のアートメイクが多いですが、私の目指すところがアピアランスアートメイクでしたので、3年前から乳輪・乳頭のアートメイクスクールが日本に増えてきたのもあり、通って技術を取得しました。
ーー3年前から乳輪・乳頭のアートメイクのスクールに通われたとのことですが、それまではあまり学べるところがなかったのでしょうか?
鵜澤さん:眉毛やリップは4〜5年前から増えてきた印象でしたが、乳輪・乳頭のアートメイクのスクールは日本になかなか無いですね。他のアートメイクと比較すると知名度は低いと思います。
ーー機会が少ない中で、経験を積みながら学んでこられたのですね。
鵜澤さん:大きい病院や大学病院などは、ドクターが乳房再建をした後にそのままアートメイクを入れるところもあります。そのため施術できる機会が少ないのもありました。
また、アメリカなどだと乳房再建をする人も多いのですが、日本では乳房再建自体を受けるのが主流ではありません。
シリコンを入れるなどの場合、少しずつ食塩水を注入しながらシリコンを入れられるまで皮膚を伸ばしていきますが、この過程には半年ほどかかる上、感染症のリスクもあります。
日本では乳房形成は保険適応になっているものの、なかなか受けられる人は少ないままですね。
ーー国民性や考え方の違いでしょうか。病気を治療して以降のところまで気持ちが回らないなどもありますかね。
鵜澤さん:国民性の理由もあると思います。
後は、乳がんの治療は再発のおそれもありホルモン治療が5~10年ほどとかなり長期的な治療になっていくため、その負担もある中で乳房再建や乳輪・乳頭アートメイクアートメイクまでいかないという方も多いのかなと思います。
乳輪・乳頭アートメイクについて
■乳輪・乳頭のアートメイクについてどんな方が対象者なのか、どのような変化があるのか、形成手術を受ける場合との違いやメリットについて、読者の方向けに教えてください。

鵜澤さん:一般的には乳輪・乳頭のアートメイクは、乳房再建された方が対象になります。
エキスパンダーで皮膚を伸ばしてからシリコンの乳房インプラントを入れた方または自家組織により乳房再建された方になります。
(乳房再建されない方でも乳輪・乳頭のアートメイクをされる方もいらっしゃいます)
乳頭を再建された方だけではなく、そうでない方もアートメイクによって乳輪・乳頭を3Dに見せることができます。
眉毛などより定着は良い部分ではありますが、手術した傷跡にデザインなど重なってしまうと定着が悪いケースもあります。眉毛のアートメイクと同様に通常2~3回の施術で完成させていきます。
ーー乳輪・乳頭という部位を考えた時に痛みが不安に感じる人もいるかと思ったのですが、痛みの点はいかがでしょうか。
鵜澤さん:切除をされているため、痛みが鈍くなっていたり感じなくなっていたりする方もいます。乳輪・乳頭のアートメイクは麻酔を使用して施術していくものの、痛みについては「すごく痛い」と感じられている方はいない印象ですね。許容範囲内の痛みですのでご安心ください。
■乳輪・乳頭のアートメイクについて感じる課題感などあれば教えてください。
鵜澤さん:現在日本では乳がんが増えており9人に1人が乳がんになる時代となっております。8人に1人の時代になるのも近いのでは、と言われております。
乳がんでの再建率は保険適応になり、ここ数年で増えてきましたが20%前後のままとなっております。現在は18%ぐらいです。この数字は低いと感じますよね?
ーーかなり低いと感じました。
鵜澤さん:乳がんは長い経過が必要となり、術後の再発の心配などもあります。ホルモン療法の場合は5~10年と長く、がんが治ったらそれで良いと思っている患者様も多いのが印象です。
ーー確かに切除も含め、がん治療自体が心身ともに大きな負担となりますよね。なかなか再建やアートメイクまで繋がらないのかもしれません。
乳輪・乳頭のアートメイクを施術する中で患者様とのエピソード
■実際に乳輪・乳頭のアートメイクを施術する中で何か印象的な患者様とのエピソードがあれば、差し支えのない範囲で教えてください。
鵜澤さん:「治療中は考える余裕もない」「生きることで一生懸命でした」とおっしゃる方が多い印象です。
少し時間が経ち再発の心配はあるものの、日常生活を取り戻してきたタイミングで、心にも少し余裕ができてきて、乳輪・乳頭のアートメイクを考える患者様が多い印象です。
「温泉に行きたい」「鏡に映る自分が何だか嫌」などの理由でアートメイクを考えたという方が多いです。
ーーやっぱり治療における負担が大きいのが、アートメイクまで繋がらない理由なんですね。

鵜澤さん:大学病院などでも、乳房再建から半年後などでアートメイクを提案されるみたいです。
傷の治り具合や皮膚の状態、抗がん剤による影響などを総合的に考えた時に、半年以降がタイミングだと思います。
ーー乳房再建後の選択肢として乳輪・乳頭アートメイクをご紹介していただける病院とそうではない病院がありますよね。
鵜澤さん:そこが先生のご判断になってしまうので、なかなか難しいですよね。
乳輪・乳頭のアートメイクに対する想い
■乳輪・乳頭のアートメイクに対してどのようなことを大切にされているか教えてください。
鵜澤さん:やはり羞恥心がある部分であるため、バスタオルを多めに用意したり、お顔の部分をおおったりしながら施術いたします。上半身を脱いでいただくので、お部屋の温度や掛物などで調整しております。
患者様は「誰に見せるわけではないけど」「何だかね…寂しい…」とおっしゃる方が多いです。何より繊細なお気持ちを抱えている方が多いため、施術中の空気感作りを気をつけるようにしています。
ーー施術部位が羞恥心を感じやすい部位だからという点もありますが、治療を経てさまざまなお辛い経験をされた患者様だからこその繊細さもありますよね。
鵜澤さん:そうですね。お胸がなくなってしまうのは女性としてやはりショックですので、カウンセリングも含め施術の始まり〜終わりまで、少しでも寄り添うことができればと思っています。
■乳輪・乳頭のアートメイクをする中で、患者様へ伝えていきたいことなどあれば教えてください。
鵜澤さん:まずはカウンセリングからで良いと思っております。
美容のアートメイクと違うためお話をさせて頂き、ゆっくりお考えいただけたらと思います。
患者様が施術を受けたいと思われたときがタイミングだと考えていますので、少しでも不安に思ったりした場合、施術は受けなくてよいと思っております。
ーーカウンセリングを受けたら施術を受けなければならないとハードルを感じてしまっている方もきっといらっしゃいますよね。
鵜澤さん:いらっしゃると思います。
たまに耳にしますよね、契約するまで帰さないとか(笑)。

■乳輪・乳頭のアートメイクに対して今後のビジョンや展望などはありますか?(抗がん剤治療をする方へさらに取り組みを伝えていきたい など)
鵜澤さん:乳輪・乳頭のアートメイクは、まだまだ認知度が低く、知らない方も多いです。
抗がん剤治療をしたら脱毛してしまい、ウィッグがあるように、乳がんと診断されたら乳輪・乳頭のアートメイクという選択肢があることを多くの方に知ってもらいたいです。
ーー治療中や再建のタイミングなど、まずは病院内のどこかで知ってもらえると良いですね。
鵜澤さん:病院によっては女医さんなどだと、時々お話をしてくださる方もいらっしゃるそうなのですが、男性のドクターだとアートメイクのお話をしてくださるのはなかなか難しいですね。治療が優先というのはもちろん理解しているのですが。
あとは、ウィッグには助成金がある自治体が多いので、アピアランスケアのアートメイクには助成金が今後できるとよいと思っています。(現在はありません)
ーー助成金の有無も、患者様の選択肢として選ばれるために大事な要素ですよね。今後さらに注目が集まり助成金制度ができると良いです。
最後に乳輪・乳頭アートメイクに関心を持っている方への思いを一言
■最後に乳輪・乳頭アートメイクに関心を持っている方に対してメッセージをお願いいたします。
鵜澤さん:癌と診断され、治療や生活でいっぱいいっぱいになっている患者様がほとんどです。先生に今後の治療方針などたくさん言われて大変だと思いますし、精神的にも体力的にも辛いと思います。
治療が落ち着きましたら、急ぐものではないので乳輪・乳頭のアートメイクについて考えて頂けたらと思います。
まずはカウンセリングで相談だけでも良いと思っております。
ーー生活が落ち着いたタイミングなどに乳輪・乳頭のアートメイクやエピテーゼについてご検討いただけると良いですね。
乳輪・乳頭アートメイクに関心のある方は、一度鵜澤さんへお問い合わせください。
他エリアを含めて、よりゆっくり相談をしたい方は、おまもりアートメイク専用のLINEにご登録ください。
相談窓口をご用意しております。
https://line.me/R/ti/p/@485xeove
取材したライター

鬼頭 怜那 -Rena Kito-
(正看護師・産業心理カウンセラー)
小児科総合病院の産科に就職。障害を持って生まれる胎児を身篭る母体の管理の病棟で勤務後、翌年精神科病棟の急性期、慢性期で勤務。
さまざまな精神疾患の患者の看護や薬理病理の勉強、身体疾患の患者も多く全身管理も行う。
その後精神科特化の訪問看護ステーションにて勤務。地域で生きる精神科疾患の患者の看護と地域連携、他職種連携を行う。
現在は看護師ライターとして医療記事の執筆や編集を行っている。