全3回に渡る「おまもりアートメイク」の取材も、ついに最終回となりました。
今回はエピソードトークとして、代表の石原さんが、実際に脱毛症に悩む患者さんやがん闘病中の方からアートメイクについて相談を受けたエピソードをご紹介します。
このエピソードを受けて、石原さんが実際にどう感じられたのかも伺いました。
ぜひご覧ください。
初めて脱毛症の患者さんの施術を行ったときの話
―石原さんがこれまで施術してこられたお客様とのエピソードで、印象に残っているものはありますか?
[石原]
実際に来院された脱毛症のお客様の話をします。
私が会社を作ったきっかけにもなったエピソードです。
以前、脱毛症の男性を担当させていただいたことがありました。
後天性の脱毛症で急に眉毛が抜けてしまったそうで、ご家族のすすめがあり来院してくださいました。
私は脱毛症の患者さんにお会いしたのも、施術をしたのも、そのときが初めてでした。
その患者さんは、眉毛がないだけで怖い印象になってしまうと悩んでいました。
施術後は、怖い印象になってしまっていたお顔の表情が柔らかくなり、眉毛を描く手間も削減できたと喜んでいただけました。
この経験がとても印象に残った理由は、脱毛症の方に施術をしたのが初めてだっただけではないんです。
その男性が脱毛治療を行っているクリニックでは、医療アートメイクの情報がなかったそうなんです。
もしそのクリニックの医師が、医療アートメイクのことを知っていれば、脱毛に悩む多くの人の負担を減らすことができるのにと。
この経験が、医療アートメイクを広げていきたいと思うきっかけとなり、社団の立ち上げへと繋がりました。
がん治療中の方にアートメイクの施術をお願いされた話
―ありがとうございます。社団の立ち上げやお守りアートメイクの原点となるきっかけだったのですね。
他にも印象的なエピソードがありましたら、ぜひ聞かせてください。
[石原]
はい、もう1つ印象に残ったエピソードがあります。
がん治療中の50代の男性の方が、ご家族の紹介でアートメイクをしてほしいと来院されたことがありました。
がんの治療を始めて、髪が抜けることはわかっていたそうですが、「まさか眉毛まで抜けてしまうとは知らなかった」とのことでした。
施術をしたかったのですが、患者さんががん治療の1クール目と2クール目の間だったこと、そして、施術をするためには採血と主治医の許可が必要なため、できないことをお話しました。
患者さんは「こんな風に眉毛が抜けることを教えてほしかったし、医療アートメイクがあるということも病院で教えてもらえていたらよかったのに。そうしたら治療が始まる前に眉毛を入れてもらったのに」と、がっかりしながらお話されていました。
「病院では、医療アートメイクが全然知られていない」ということを意識したきっかけになり、これを機に、患者様に対してだけでなく、医療現場においても「医療アートメイクが抗がん剤治療者の助けになること」を伝えていく活動を、社団での活動内容の一つとして取り入れました。
がんの治療を行う患者さん、そして医師をはじめとする医療従事者の双方に対し、アピアランスケアの一つとして、もっと医療アートメイクの認知や理解を深めていただくことが今後の大きな目標です。
おまもりアートメイクの取材を通しての総括
3回に渡る石原穂乃佳さんの取材記事は、いかがだったでしょうか。
病気で眉毛を失うことは、その人の表情、アイデンティティの消失にも繋がりかねません。
多くの患者さんやその家族、そして医療従事者の方ががん医療アートメイクを知り、どこでも施術を受けられるようになることで、がん医療アートメイクで自分の表情を維持するという選択が気軽にできるようになってほしいです。
今回の記事によって、がん医療アートメイクががん患者さんや脱毛症に悩む方に広く認識され、一人でも多くの方の身近な存在になれると幸いです。